黒衣の騎士軍将
世にも誉れ高きエトルリアの騎士軍将たるパーシバル、その戦場においての働きたるや、若い時分からそれこそ鬼神の如きであった。
あるとき、前線から帰還したパーシバルを迎えたのは、部下の氷のように青い顔と驚きの声だった。パーシバルの鉄の鎧は朱色の血にまみれていた。
「早くお手当てを!」
「案ずるな。返り血だ」
次の戦で帰還したパーシバルを迎えたのは、部下の雪のように白い顔と驚きの声だった。パーシバルの鋼の鎧は赤い血にまみれていた。
「早くお手当てを!」
「案ずるな。返り血だ」
その次の戦で帰還したパーシバルを迎えたのは、部下の土のように色のない顔と驚きの声だった。パーシバルの銀の鎧は黒い血にまみれていた。
「早くお手当てを!」
「案ずるな。返り血だ」
さすがのパーシバルも、これには弱って、知恵ものと名高い戦友セシリアに助言を請うた。
「あら、そのようなこと」
セシリアは、こともなげに答えた。
「お召し物をお替えになれば宜しいかと存じますわ」
こうして、後世にその名を残す、黒衣の騎士軍将が誕生した。
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