剣士小話
歩くギィのうしろに人影。
ギィ
「わ、だ、誰だ?!」
プリシラ
「すみません、わたしです……」
ギィ
「何だプリシラか。……俺の背中になんかついてるのか?」
プリシラ
「いえ、三つ編みが解けかかっていたので」
ギィ(髪を触って)
「ほんとだ……女ってすごいな」
プリシラ
「?」
ギィ
「この前も、髪がほどけてるのに気づいた人がいたんだけど、その人も女だったし、子どものときからそうだった。女は、髪がほどけてたり、糸がほつれてたりすると、すぐそういうのに気がつくんだ。男は全然気づかないのに」
プリシラ
「そう……ですか?」
ギィ
「うん、すごい」
プリシラ
「でも、わたしはギィさんもすごいと思います」
ギィ
「えっ? 何で?」
プリシラ
「ギィさんはいつもご自分の感情に素直で、表情もくるくると変化して……お話していると、あたたかい気持ちになります、とても」
ギィ(照れる)
「……」
プリシラ
「楽しいときに笑って、悔しいときに泣ける。なかなかできないことでしょう? 少し、うらやましいです」
ギィ(こともなげに)
「? プリシラもそうすればいいだろ?」
プリシラ
「え……」
ギィ
「笑いたいときに笑って、泣きたいときに泣けばいいんだ。簡単だろ?」
プリシラ(静かにほほえむ)
「……そうですね」
ギィ
「うん、あんたやっぱり笑ったほうが、かわ……かわ……川に行くときもいいもんな!……ごめん、なに言ってんだろおれ……」
プリシラ
「いいえ、いいえ……ギィさん、ありがとうございます……」
|