表紙



異邦人





 海賊島での一戦の後、好きにするがいいと言い捨てると、スノウはかつての友を睨みあげた。そのまなざしに浮かぶ厳しい光が、暗に刃を下ろせと告げている。
 だが、ヨンはそうしなかった。彼はゆっくりと首を横に振り、ただ逃がすようにとだけ、短く命じた。
 その姿に、身を這いずるようなひどい違和感を覚える。スノウは呆けた頭で考えた。自分の知る彼は、他者に対して、決して否定の言葉を口にしなかった。素振りを見せなかった。望みはなく、欲はなく、妬みもなく、また意思もない。そういう生き物だと思っていた。




表紙

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